【無線LAN最新動向】11ac Wave2の性能を引き出すコツ

IEEE802.11acの第2世代(Wave2)対応製品がいよいよ“使いどき”だ。性能をうまく引き出せば、ユーザーの体感品質に直結する「実効速度」を大きく向上させられる。そのコツを解説しよう。

企業のオフィスや学校の教室などで、大規模に無線LAN(Wi-Fi)を構築する動きがますます広がっている。だが、せっかくWi-Fi環境を作っても、それを利用する端末の増加によって通信品質・速度が低下し、業務に支障を来すケースも出てきている。1台のアクセスポイント(AP)のカバーエリアに多くのWi-Fi端末が密集して通信容量が不足したり、電波干渉を起こすのが原因だ。

これからは、キャパシティと実効速度を重視した製品選びと設計・構築がさらに重要になる。このニーズに応えるのが、IEEE802.11acの第2世代「Wave2」だ。スループットを高める新機能を搭載した規格である。

さらに、次世代規格として標準化が進められている「11ax」も、キャパシティとスループットの向上にフォーカスしたもので、2018年以降の実用化が見込まれている。

一方、屋外にWi-Fi機器を設置し、様々な用途に活用しようとする動きも進み、Wi-Fiの利用シーンはさらに拡大している。

本稿では、最新技術を効果的に使ってWi-Fiの利便性を高めるためのポイントと、利用シーンを広げる方法の2つの側面からWi-Fiの最新動向をレポートする。

製品選びで大きな差が出るWave2 MU-MIMOはこう活かせ!Wave2対応製品は2015年後半から本格的に市場に投入され始め、昨年後半にはミドルクラス向けにも広がってきた。ラジオチップの低廉化によって、価格もWave1と遜色ない水準まで下がってきている。

ラッカスワイヤレスを昨年買収したブロケード コミュニケーションズ システムズで事業開発部テクニカルディレクターを務める小宮博美氏は「今後発売する新製品は基本的にすべてWave2になる」と話す。「Wave1からWave2へ切り替える際も、ほぼ横ばいの価格帯で移行できている」という。なお、同社で現在一番の売れ筋であるAP「Ruckus ZoneFlex R510」もWave2対応だ。

Ruckus ZoneFlex R510
ブロケード コミュニケーションズ システムズのWave2対応アクセスポイント「Ruckus ZoneFlex R510」。端末の現在位置に合わせてビーム状に電波を発する「BeamFlex+」を搭載している

このWave2のメリットを最大限活かすにはどうすればいいのか。

改めてWave1との違いを整理しておくと、Wave2の注目点は次の2つになる。1つは、チャネルボンディングが可能な帯域幅の拡大。もう1つがマルチユーザーMIMO(MU-MIMO)への対応だ。

チャネルボンディングとは複数のチャネルを束ねて高速化する技術であり、この帯域幅が従来の80MHzから160MHzおよび80+80MHzに拡大した。

ただし、使い所はあまりない。160MHz幅にボンディングすれば、使えるチャネルはわずか2つに制限されてしまうからだ。実際には、20~40MHz幅でより多くのチャネルを確保し、電波干渉の少ないエリア設計を行うのが無難な使い方だ。

一方、ぜひとも活かしたいのがMU-MIMOである。APと複数の端末(最大4台まで)との同時通信を可能にする技術だ。

例えば、1台のAPがカバーするエリアに3台の端末がいた場合、これまでは1台ずつ順番に通信していたが、MU-MIMOでは同時に3台すべてにデータを送信できる。

これにより、無線リソースを有効に利用できるようになり、スループットが向上する。多数の端末が同時にアクセスする高密度環境でも、安定した実効速度が確保できるのだ。なお、Wave2でMU-MIMOが使えるのは下り方向の通信のみで、上下方向のMU-MIMOは次の11axで実装される。

月刊テレコミュニケーション2017年3月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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