ビジネスの明日を動かすICTトレンド失敗する「働き方改革」に足らない社内IT部門の2つのチャレンジ

企業にとって最重要課題の1つとなった「働き方改革」――。その真の意味での成功のカギは、「社内IT部門(情シス部門)の活躍にかかっている」というのが筆者の考えです。働き方改革に注目が集まる背景から政府の取り組み、社内IT部門に求められるチャレンジまでを解説します。

現在、「働き方改革」という言葉が非常に注目されています。

2016年9月からは、安倍首相の諮問機関である「働き方改革実現会議」で議論され、2017年3月には「働き方改革実行計画」も制定されました。あなたの会社でも、昨年ぐらいから働き方改革に関する部署が新設されたり、新しいプロジェクトが動き出したりしているのではないでしょうか?

しかし、働き方改革の中身は、そんなに目新しいものではありません。たとえば、働き方改革の中でも、特に社内IT部門に関係の深いテレワークは、もう何年も前から耳にする言葉です。これらの実施状況はどうなっているのでしょうか。

前述の働き方改革実行計画には、現状のテレワークの実態について数値が記されていますが、それによると、

・テレワークを導入していない企業:83.8%(2015年末)
・全労働者に占めるテレワーカー(週1日以上終日自宅で就業):2.7%(2015年)

とのことです。テレワークが導入されている企業は少数派であり、制度を活用している従業員(テレワーカー)はさらにごく少数派と言えるでしょう。

このような実態を見れば、「これまで進まなかった働き方改革が、今回、本当に実現できるのか」という疑問を感じる方も多いかも知れません。

結論から言いますと、私は今回の働き方改革が真に実現するかどうかは、「社内IT部門(情シス部門)の活躍にかかっている」と考えています。その根拠について、今回の記事では、以下の流れで説明していきます。

1.働き方改革が必要とされている背景
2.政府の取り組み
3.働き方改革がうまくいかない原因と解決の方向性
4.真の働き方改革の実現のため、社内IT部門がチャレンジすべき2つのこと

本サイトの読者の方には、社内IT部門の方も多くいらっしゃいます。今回の記事を参考にして頂けたら、大変光栄です。

1.働き方改革が必要とされる背景政府は、働き方改革の目的を以下のように位置づけています。

・少子高齢化により、近い将来の労働力不足が懸念されている
・そのため、労働人口を増やし、生産性を高めることで、さらなる経済成長へつなげる

このように、目的は非常にシンプルに見えますが、一方、現状を取り巻く問題は様々な要因が絡み合い、構造問題ともいえる複雑な状態になっています。それを示したのが図表1です。


図表1 働き方改革が求められる背景にある「構造問題」

働き方改革が求められる背景にある「構造問題」

簡単にポイントを説明すると以下のとおりになります。

・「少子化で生産年齢の人口が減少」「高齢化で家族を介護する人が働けない」などの理由から、労働人口は減少し、限られた労働者は長時間勤務・残業過多を強いられている

・そのような厳しい労働環境では、育児をしている女性や、まだ働きたいと思っている高齢者も働くことはできず、その結果、職場の長時間勤務・残業過多はますます進んでいる

・厳しい環境に置かれた労働者の生産性は上がらず、過労や疾病、最悪の場合、死に至ることもある

・一方で、働けない多くの人は安定した収入を得ることが難しく、将来に希望がもてない。そのような世帯が増えており、ますます少子化に拍車が掛かっている

・以上の結果として、日本経済は低迷し、国民は幸福感を感じることができていない

このように俯瞰して全体像を眺めると、複雑に絡み合った構造問題であることが明確に浮かび上がってきます。

そして、その構造問題の各要素に同時並行的に対策を行い、抜本的に解決を図ろうと、政府は様々な取り組みを行っています。

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西俊明(にし・としあき)

慶應義塾大学文学部卒業。合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション代表社員/CEO。富士通株式会社で17年間にわたり、営業、マーケティング業務に従事。2008年、経済産業大臣登録・中小企業診断士として独立し、2010年、合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション設立。専門分野は営業・マーケティング・IT。Webマーケティングやソーシャルメディア活用のテーマを中心に、8年間で200社以上の企業や個人事業主のマーケティングのコンサルを実施、180回以上のセミナー登壇実績をもつ。著書に『あたらしいWebマーケティングの教科書』『ITパスポート最速合格術』『高度試験共通試験によくでる午前問題集』(技術評論社)、『絶対合格 応用情報技術者』(マイナビ)、『やさしい基本情報技術者問題集』『やさしい応用情報技術者問題集』(ソフトバンククリエイティブ)、『問題解決に役立つ生産管理』『問題解決に役だつ品質管理』(誠文堂新光社)などがある。

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