IoTでつくろう!新しいニッポン【地方創生×IoT】観光客の満足度を向上!リピーターにつなげる

2020年に向けて外国人観光客のさらなる増加が見込まれる中で、観光は地方を活性化する切り札として期待が集まる。IoTの活用により、観光収入やリピーターを増やす取り組みも始まっている。

全国各地で、「地方創生」に向けた取り組みが加速している。地方では過疎化や高齢化が急速に進んでおり、経済的・社会的な共同生活の維持が難しく存続が危ぶまれる「限界集落」は全国に1万以上あるといわれる。地方の人たちが安心して豊かに暮らせるための取り組みは、喫緊の課題だ。

地方の雇用や人口、収入を増やすための方策の1つに、観光がある。昨今の日本ブームもあり、2016年の訪日外国人観光客は2403万人と過去最高を記録した。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、さらに増えることが予想される。

観光を地域の活性化に結び付けるには、観光客の滞在時間を増やして観光収入の増加につなげたり、満足度を向上させてリピーターを増やすことも重要だ。IoTの活用によるそうした取り組みを紹介する。

Beaconでその場に合った情報島根県の南西に位置する津和野町は、城下町としての美しい街並みが残り、「山陰の小京都」して知られる。

だが、同町では「通過型観光地」という大きな課題を抱えていた。年間100万人前後の観光客が訪れるものの、その多くが隣接する山口県萩市へ流れる通過地となっており、宿泊する人が非常に少なかったのだ。

「人が集まるだけでは観光ではない。1泊してお金を使ってもらうことで地域の経済力が高まって活性化し、人口増加にもつながる」と一般社団法人津和野町観光協会副会長の山岡浩二氏は話す。

観光客にできるだけ長く滞在し、街の魅力をより深く味わってもらいたい――。こうした思いから、津和野町では2010年、新たな観光ガイドサービス「津和野町ユビキタス観光ガイド(通称ユビナビ)」を構築した。

「津和野町ユビキタス観光ガイド」は、Beaconを使って現在地の観光情報を音声で配信する
「津和野町ユビキタス観光ガイド」は、Beaconを使って現在地の観光情報を音声で配信する

ユビナビは、主要観光コース付近の屋外30カ所と美術館など施設内14カ所の計44カ所にBeaconを取り付け、場所ごとに固有の信号を発する仕組み。各所の近くに来ると、観光客に配布した専用の携帯端末がBeacon信号を受信し、それぞれの場所に関する情報が自動的に送られる。提供する情報は、津和野町に関する音声ガイド(日・英・中・韓国語に対応)のほか、津和野弁(音声)や流鏑馬・鷺舞といった祭事の動画もある。

コンテンツは、英語や中国語、韓国語にも対応
コンテンツは、英語や中国語、韓国語にも対応

システム開発やコンテンツ制作を手掛けたパスコ中央事業部技術センター コンサルタント技術部副部長の岩崎秀司氏は「現在地やその時々に合った情報を提供できるのが、ガイドブックなど従来の観光情報との違い」と説明する。

津和野町観光協会では30台の専用端末を用意し、1日300円で貸出を行った。当初は年間で300台以上の利用実績があり、「音声ガイド情報がとても役に立った」という感想が聞かれるなど利用者の満足度も高かった。土産物の購入や津和野町を再訪するきっかけ作りにも貢献したという。

なお、現在はスマートフォンへの移行を進めているところだ。誰もが肌身離さず持ち歩くスマホを活用することで、いっそう情報発信力を高めていきたいとしている。

月刊テレコミュニケーション2017年3月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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